Raichoで目指す未来

乗鞍の自然を起点に、
新たな繋がりを生み出したい

日野菜美
01.
人や自然との繋がりから、新しい世界を知る
今の仕事

メインは宿の業務で、週1,2回はカフェ勤務をしています。同時に、トレイルの整備や外来種駆除など、地域で行っているプロジェクトに携わっています。
Raichoの業務は幅広いですが、全て繋がり合っていると思います。宿やカフェを通じて、乗鞍を訪れた人が乗鞍の自然・食・人々・暮らしと繋がるきっかけを提供する。トレイル整備を通じて、訪れた人に「歩きやすいな」「乗鞍にはこんな景色が広がっているんだ、気持ちがいいな」と、豊かな自然を気軽に楽しんで感じていただく。そんな風に、乗鞍をいいな、好きだなと感じる人が増えると嬉しいです。

Raichoの業務は全て、乗鞍の魅力を高めること、訪れる人にその魅力を届けること、乗鞍を好きな人が増えること、暮らす人も訪れる人も幸せで、活気ある乗鞍の未来に繋がっていると考えています。
ここでの日々は「取り組みたい!少しでも力になりたい!」と思うことがたくさんあり、充実しています。一方で、何にでも手を出そうとしていっぱいいっぱいになりがちなところがありますね(笑)。時間の使い方や進捗管理など、自分の得意ではないことに取り組めるいい機会だなと思っています。

乗鞍への思い

私は乗鞍へ移住してまだ1年半ほどですが、乗鞍の自然や、人、暮らしが大好きです。乗鞍で暮らす日々の中で、自然の景色や人との繋がりの一瞬一瞬に、胸を動かされたり、心が緩んだり、温かくなったりしています。乗鞍では地域の人たちを中心に、乗鞍には住んでいないけれど乗鞍を好きな人たちも一緒になって、様々な取り組みを継続しています。新たなプロジェクトが始まることもあるので、今後はさらに活気のある地域になるんじゃないでしょうか。

私は、「今、乗鞍を必要としている人」に、乗鞍の魅力をしっかり届けたい。乗鞍の自然や、人、プロジェクトと関わることに、面白そう!楽しそう!と興味を持つ人を増やしたいです。その先で、乗鞍を訪れる人や移住する人が増えて、ここでお店を開きたいとか新たな挑戦をしたいとか、いろいろなエネルギーがあふれる場所になったら嬉しいです。

潜在的に乗鞍での時間を求めている人は、たくさんいると思っています。自然の中で解放された気持ちになりたいとか、静かな場所で一人で過ごしたいとか、ハイキングを始めてみたいとか。でも行ったことがないと不安で、「ハードルが高い」と感じてしまう。でも地域の人々が整備してくれているトレイルは、登山と比べると、特別な装備がなくても簡単に歩くことができるんです。たとえば乗鞍高原にあるトレイルは、初めてでも一人でも、お散歩感覚で自然の中を冒険できるので、いろんな人におすすめできるトレイルです。
それでも初めての人にとっては、何が必要かな、自分はどれぐらい歩けるかな、危険な動物はいないかな、と不安がありますよね。そんなふうに「気になっているけど経験がないから不安」と感じている人にこそ、「乗鞍での時間」はピッタリだと思っています。そういう人たちが、乗鞍を知って訪れてくれるような発信をすることで、「ここが、自分が今求めている場所だ」と感じてもらいたいですね。

乗鞍を訪れた人が乗鞍のことを好きになって、何度も訪れるようになって、そのうちに、乗鞍を好きな一人として一緒に活動したいと思ってくれるかもしれない。乗鞍と関わりを持つことが、その人の想いの実現や幸せに繋がることがあれば、それは私にとっても乗鞍にとっても嬉しいことですね。私たちがしているのは、人と乗鞍を繋ぐことでもあると思っています。

私自身、乗鞍での取り組みを通じて、自分の世界が広がったと感じることがたくさんあります。新しい人との繋がりができたり、自然の深い魅力に気づけたり。自然や他者と繋がることで、これまでになかった景色を見ることができる。その瞬間がとても好きです。

02.
生きたい環境と、やりたい仕事が重なった
Raichoに来るまで

私は新卒入社した会社の配属で、松本に移住してきました。出身は愛媛、学生時代は東京で過ごしたので、長野県で暮らすのは初めて。こんなに山が身近な地域に住んだことはありませんでした。
元々自然は好きでした。幼い頃は川や海、近所の竹林やみかん畑に行くことが多く、自然の中でのびのび遊んでいましたね。でも「山」とはそんなに繋がりがなかった。どちらかというと「海」のほうが身近だったかな。

実際に山に行ってみようと思ったのは、移住して2年目の頃です。初めて一人で、燕岳に日帰り登山に行きました。一人で登り切れるかという不安で、登山口に着くまでドキドキし続けていたのを覚えています。でも、登り始めてすぐ、山の中の空気感や道中の景色に引き込まれました。頂上からの景色、標高の高い場所で吸う空気に、すごく感動して。登り切った達成感も、本当に気持ちよかった。そのとき、やりたいことには一歩を踏み出して挑戦する価値があるのだということ、その先で、まだ自分では想像もできない感情や経験に出会えるのだということを、強く実感しました。以来、やってみたいと思うことや気になることは、自分の意志で挑戦していこうと、より強く思うようになりました。

もともと環境に対する関心はあったのですが、山との接点が増え、自然をより身近に感じるようになるにつれ、自然のすぐそばでの暮らしや、自然と関わる仕事をしたいと思うようになりましたね。でも当時の仕事は、環境問題に関係するものではなかった。
人生で使える時間は限られています。ほとんどの人が、一日のうち多くの時間を仕事にあてていると思います。私も同じです。それであれば、日々の中で、自分が実現したいことに強く結びついていることに対して、少しでも多くの時間を使えた方が、私の人生は豊かで幸せになる。シンプルですがそう強く思い、仕事を変えることに決めました。

いろいろな地域を探す中で、私が軸にしていたことは3つ。環境に対して想いをもって取り組んでいること。自然の近くで暮らすこと。そして、地域のために地域の人々と一緒に活動できること。そうして探す過程で「乗鞍高原が、ゼロカーボン推進モデル地域として認定された」という内容の記事を見つけ、乗鞍とRaichoの存在を知りました。

私は、宿業やカフェ業に強く興味があったわけではありませんでした。Raichoは、ただ宿やカフェを運営しているだけではなかった。事業を通して取り組んでいるのは、乗鞍の自然の恵みを届けることだったり、人と人を繋げることだったり、資源を循環させることだったり…みんな、乗鞍の幸せな未来に繋がっていること。Raichoには、乗鞍高原を愛する気持ちがあり、環境問題に対する想いがあるから、実際に行動を起こし続けているんだなと思いましたね。代表の佑馬さんの記事も読み、さらに強く共感しました。自然環境に関する課題も、地域に関する課題も、どちらも用意された正解がないものです。正解がない問いと向き合いながら行動を起こし、変化し続けることが必要な仕事に取り組んでみたいと思いました。
周辺環境を魅力に感じた場所でも、そこにやりたい仕事がないこともあると思います。私の場合は、自分の生きたい環境と、やりたい仕事が重なる場所にRaichoがありました。ご縁があったんだと思いますね。

大切にしている時間

自然の中で一人になる時間を大切にしています。それは、他人や時間を気にせず自分のことを内省する時間でもあります。自然の中で、普段考えていることや何気ない出来事に思いを馳せていると「起きていることは違っても、根本的にみんな繋がっている」ということに気づかされます。そういう時間が、自分のことを深く知り、自分を持って生きることに繋がっていると感じています。
そう思うようになったのは、これまでに何度も「自然の中にいる小さな自分」を感じる場面があり、そこで心を揺さぶられた経験が、私の中に積み重なっているからだと思います。

今でも思い出すのは、学生時代、一人で沖縄に行ったときに見た情景です。嵐が来る前日に波照間島に着き、島を一人自転車で走っていました。そのとき、道脇の藪の中に、とても小さな小道があるのを見つけました。人の気配がなく少し怖かったですが、好奇心が勝って進んでいくと、道の先には誰もいないビーチがありました。嵐の前に吹く風で大きくうねる波、薄暗い灰色の空と、その色を反射する海。そのとき、突然一羽のカラスがそばに降りてきました。カラスと私一人しかいない世界。今ここで私が姿を消しても、きっと誰にも気づかれないんじゃないか…そんな風に思い、自分の命が自然界の中でいかに小さいかを感じました。それと同時に、自分の存在よりもはるかに大きな自然が広がる世界の中で、自分が生きていることをありがたく思う気持ちが湧いたのを覚えています。

乗鞍に来てからの変化

いい意味で、自然が特別(=非日常)なものではなくなりました。慣れたという意味ではなく、私にとって肉体的にも精神的にもっと身近なものになりました。自然の中にいることは、人間にとってナチュラルなことなんだと。

先ほど、自然の中で一人になる時間を大切にしているとお話ししましたが、自然との繋がりは、大自然の中に身を置かなくとも感じることができると私は思っています。たとえば、市街地の小さな公園の緑やそこに集まる様々な鳥、沿道に植えられた木々、街の中に咲く花と、その上を飛び交う蝶々など…。どこにいてもでも自然との繋がりを感じられるようになると、長野の大自然の中にいても、東京のような都会にいても、今そこに在る、自然が魅せる瞬間を捉えることができて、穏やかで豊かな気持ちでいられるようになります。人混みや満員電車の中にいるときでも、窓から見えた一瞬の紅葉や河川敷の桜の景色に、季節の巡りを感じ、穏やかな気持ちになれるんです。
自分自身がどういうマインドでいるかで周りの見え方が変わってくるように、身近にある自然との繋がりって、自分次第でどこにいても感じられるのではないでしょうか。

気持ちの部分で自然と繋がり、心に豊かさを感じる体験は、多くの人にとっては日常的ではなく、特別なことだとされるかもしれません。でも本来自然と人は、そういう風に繋がってきたと思います。どこにいても自然との繋がりを感じられるという感覚は、乗鞍に来てよりたしかなものになりました。

私は、自分軸を常に大切にしたいと思いながらも、自分が取り組んでいることに対しての人からの評価を気にしてしまうことがあります。でも、人からの評価を気にして自分の言動を選択していると、そのうち自分の想いや自己実現したいことからずれてしまう。それは幸せじゃないし、心は満たされないなと思うんです。
自分には今どういう想いがあって、どういう意志を持っていて、どういうことに興味があって、何を実現したいのか。それをはっきり言える状態が、「自分を持っている」ということだと思います。自分を持っている私でいるためにも、私にとって自然の中で過ごす時間は、とても大切ですね。
つい、自分軸からずれてしまうこともあります。それにしばらく気づかず、なぜもやもやしているのかがはっきりしないこともあります。そんなときは自然の中で、まずは自分と向き合い、認め、受け入れ、自分を愛する。その先で他者と向き合い、認め、受け入れ、尊重する。私の思う理想の生き方が、乗鞍で少しずつ実現できています。

03.
まだ見たい景色がたくさんある
自分にとっての「自然に還る」

Raichoは、コンセプトとして「自然に還る」を掲げています。私にとっての「自然に還る」とは、「自然と繋がり、自分の心が、本来の満たされた状態になる」感覚のこと。このコンセプトを知ったとき、「自分が今まで自然の中で感じていたことが、簡潔に言語化されているな」と思いました。

乗鞍で暮らしていると、自然との繋がりを再認識できる瞬間がたくさんあります。お休みの日はよく、緑が広がる場所でピクニックシートを広げて寝転んだり、フルーツと飲み物をザックに入れて散策に出かけ、気に入った場所でぼーっとしたりします。鳥のさえずりを聞きながら、木々の模様や葉の色の変化、木漏れ日を楽しみながら、「わたし時間」を満喫しています。好きな場所と聞かれたら、もう「全部」ですね(笑)。乗鞍には、自然と私一人になれる場所がたくさんある。自分を持って生きること、自然や人と繋がりながら生きることの豊かさを、自然と感じさせてくれる場所ですね。

理想の未来

Raichoで働いていると、乗鞍や国を超えて、いろいろな人に出会います。様々な繋がりを持てることは、Raichoで働く魅力の一つ。私は、乗鞍を起点に、新しい繋がりをつくり、自分の関心がある分野の活動をしていきたいなと考えています。そのために、自分にできることを増やしたい。やってみたいなと思うことばかりです(笑)。

そのうちの一つが、英語を使ったコミュニケーション。宿やカフェには毎日のように、海外からのお客さんが来られます。そのため、英語を使って乗鞍のことを紹介したり、滞在中の過ごし方の提案をしたりする機会がとても多いです。
海外から訪れた人たちと話していると、異なる文化や習慣の違いを知るだけでなく、文化や言語は異なっていても「共通していること」があると気づきます。そういう些細なことが、私の世界を少しずつ広げていますね。宿のスタッフとゲスト、という関係から、連絡を取り合う友人になることもあるんです。そんな風に交流をし、予想していなかった繋がりが増えていくことが楽しいですね。
私にとって英語はコミュニケーションをとるためのツールでもあり、同時に、自分の殻を破って新しい世界に出会いに行くことができるツールでもあります。英語を自分が満足できるレベルまで話せるようになることが目標の一つです。将来は、海外や海外の自然の中で何か活動したいなと考えています。

それからもう一つ、ヨガにも関心があります。自分の内側に静けさを感じる、その感覚が好きなんです。ヨガを続けると、心や体が少しずつ心地よい状態に整っていくのを感じますね。自分の内側に目を向けて、自分の幸せに気づいたり、自分と他者に対する、そのままを受け止める気持ちや感謝する気持ちが湧いてきたりします。ヨガの哲学も深く学びたいなと思い、最近本を読み始めました。
乗鞍の静かな自然の中で、心と体を解放して行うヨガは、とても気持ちがいいです。大地との繋がりや、自然との繋がりを五感で感じながらヨガができるのは、幸せだなと感じます。

将来的には、自分の興味のある英語と自然を組み合わせた活動を通じて、人々の幸せや健康、自然環境をよくすることに繋げられたらいいなと考えています。
Raichoや乗鞍には、自分の実現したいことに繋がるチャンスが多くあります。代表の佑馬さんやRaichoのメンバー、Raichoや地域のプロジェクトを通して関わる人々、地域で活動をしている人々、多くの人から良い刺激をもらっています。正直、簡単にはいかないことが多くあります。だからこそ、自分が取り組んでいることに強い想いを持って、その先にある未来に希望を持って、自分の可能性を広げていきたいです。

雷鳥のいる未来を、
一緒に見に行きましょう

国の天然記念物である雷鳥は、「神の使い」とも呼ばれています。高山でしか生きることができず、私たちも中々出会うことができません。
雷鳥のいる景色を残すことは、大好きな自然の風景を残すことです。
理想と現実のギャップを受け入れながら、理想の未来に向けて一歩ずつ共に歩み、みんなで美しい景色を見に行きましょう。