自然と遊びながら
生きている大人でいたい
宿のマネージャーとして働きながら、乗鞍地域に関わる事業を手伝っています。スタッフは基本的に、宿やカフェを運営しながら、プラスαで地域の仕事を担当します。自分は今、北アルプスの映像をつくる環境省の仕事に携わっています。
ずっと、「遊ぶ大人になりたいな」という思いがありました。仕事ばっかりじゃなくて、自分の好きなことを真面目に遊んでいるような大人はかっこいい。自分の理想です。
子供の頃から、自然のなかで遊ぶことが好きでした。今も自然に囲まれた生活を楽しんでいますが、「今年は雨が降らなくて水不足だ」とか「雪が少なくなっている」とか、気候変動の影響を感じることも増えました。自分が好きな環境はできるだけ守りたいし、維持していきたい。そのために、乗鞍という地域をよくしたいし、もっと色んな人に知ってほしいと思っています。乗鞍での体験を通じて、自然好きな人が増えたらいいなと思うし、乗鞍と関わりを持ってくれたその人自身が、より良い状態になっていったらうれしい。
そう考えると、自分の大切にしたいことがそのまま仕事になっている気がしますね。スタッフも、それぞれ自分の好きなことや思いを持った人が集まっています。だからみんな、自分なりのかたちで乗鞍の未来と関わっていこうとしているんだと思います。
いろいろな課題はあるけど、大人のほうが楽しいって伝えられる大人でいたいです。そうなれたらなと思って、毎日遊んでます(笑)。
Raichoの募集条件には、「標高2000m以上の山岳テント上でテント泊ができる人」という項目があります。でも僕は応募当時、2000mの山には登ったことがありませんでした。学生時代、上高地に来たついでに焼岳に登ったことはありますが、登山自体にそこまではまってはいませんでした。関東に住んでいたので、遠いしお金かかるし大変だな〜というイメージでしたね。でも、バイクにテント積んで北海道テント泊一週間はしたことがあったので、なんとかなるかなと思って。「じゃあいってきます!」と藤江さんに言って、屋久島あたりの山に登ってきました。
それからいろいろな山に登るようになりましたが、自分は日帰りよりも、衣食住背負って登るのが好きだなあと感じます。
それでも最初は、「なんで6時間も歩かなきゃいけないんだろう?」と思ってました(笑)。でも、登りきったあとの達成感や、「こんな景色あったんだ、生きててよかった」という感動を知るたびに、苦しくてもいろんなところに行ってみたいと思うようになりました。乗鞍に来て、いろんな山が身近になったからこそですね。
登山の考え方って、人生に通じるところがあると思います。山に登るためには、道具を「厳選」しなきゃいけないんですよ。道具をたくさん揃えて楽しむキャンプと違って、登山は、自分にとって本当に必要なものだけを持っていく、という考え方なんですね。
たとえば、カメラを持っていきたい、おいしいごはんを山で食べたい、と思ったら、そのための荷物を考える。実際に登ってみて、「これはいらなかったな、あれが必要だったな」と思う。そんな実験を繰り返しているうちに、自分にとって本当に必要なものが見えてくるんです。
断捨離に似てますよね。僕は学生時代、古着とか好きでいっぱい持ってたんですが、このままだと身軽に動けない気がして。ちょうど断捨離し始めたタイミングで、乗鞍に来たんです。知らず知らずのうちに、動く準備はなんとなくしていたのかもしれません。こっちに来てからはなおさら、あるものだけで生きていければ、それはそれで幸せなのかもなと思うようになりました。目の前に、こんなに素晴らしい自然がある。だからものはそんなにいらない。ただ歩いているだけで幸せだし、走っているだけで気持ちいい。本当にいい場所だなと思います。
うちの宿に来るゲストは比較的、自分たちの時間を過ごしたい人が多いです。なので、こっちからがつがつ話しかけることはしません。最低限のケアをしつつ、その人が話したそうか、話したくなさそうかを判断しながら話しかけますね。あくまで自然な関わり方を意識しています。
お客さん同士で関わりが生まれることもあります。長期滞在同士で仲良くなって、また一緒に来てくれたりとか。でもそれも相性なので、強制するんじゃなくて、合う人がいたら仲良くなってもらえたらいいなって思います。
山に登らなくても、楽しみ方はたくさんあるんですよ。近くを散歩したりカフェに行ったり、温泉に入ったり本を読んだり。いくらでもゆっくりすることができます。その人が自然体でいられるように、過ごしてもらうのが一番いいですね。「自然に還る」状態は、それぞれ違うと思うので。
最近は海外の人が多いので、チェックインも英語で対応することが多いです。みんな苦戦中(笑)。でも働いていたら、ある程度コミュニケーションはとれるようになります。だから、必ず英語ができなきゃいけないわけではありません。自分も全然英会話とかやってこなかったですし。コミュニケーションをとろうとする人だったら、話せるようになると思う。むしろ、話せるようになる環境は整っていると感じます。
1ヶ月の休みが年2回もあるのは、うちの魅力だと思います。長期休みが取れるから、余裕を持って旅に出られる。前職では考えられないことでした。ここに来て初めての休暇中は、友達から「ほんとに働いてるの?」と言われるくらい遊び回ってましたね(笑)。忙しい時期は忙しくても、休めるときはがっつり休めるので、頑張ろうというモチベーションになります。
今年の4月は、行きたいメンバーみんなでニュージーランドに行きました。集合場所だけ決めておいてあとは自由行動、最後に一個のトレイルを3泊4日で歩いて、ドライブして帰る、というスケジュールでした。うちのスタッフは、みんなでいろいろして過ごすのも好きだけど、それぞれの時間も大切にしたいタイプが多いので、比較的自由が多い工程です(笑)。楽しかったですね。
個人的には、乗鞍の自然の楽しさをもっと発信していきたいです。乗鞍には、やっぱり若い人が少ないんですよ。高齢化が進んでいて、元々1000人いないくらいだった住人が今は600人くらいになってしまって。でも最近、Raichoには若いスタッフが増えていて、今は20代が中心になっています。もっと移住者や、遊びに来てくれる人を増やすためにも、進んで発信してきたい。そのためにはまず自分が第一に、自然の中で遊ばなきゃと思っています(笑)。
最近は休憩時間に、このあたりを走るのにはまっています。気持ちいいんですよ。で、そのあと温泉に入って、また仕事に戻るっていうのがルーティーン。乗鞍に来てからは、元々好きだった自然によりどっぷり浸かっている気がします。
今Raichoで行っている環境への取り組みも、続けていくことで波及していったらいいですね。自然のことを好きになると、ちょっとした意識も変わると思うので。
藤江さんは、スタッフそれぞれの得意なことややりたいことを、仕事のなかでわりと自由にやっていいよというスタンスでいてくれます。そうすることが雷鳥のためにもなるし、今後の人生で役立つスキルにも繋がるから、と。自然のなかで遊びながら、自分にできることを少しずつ続けて、掛け算のように、できることを増やしていきたいですね。
それでいうと、自分はカメラの仕事を増やしていきたいです。始めたのは乗鞍に来て、山に登るようになってから。綺麗な景色を記録に残したいなと思って撮り始めたら、楽しくって。仕事も趣味も、繋がっている感じですね。好きで山に登って撮っているので。自分は都会より、山の写真を撮るほうが楽しいんです。ここで知り合ったカメラマンさんと一緒に山に登ったり、繋がりから仕事をもらったりもします。
いずれは乗鞍を拠点にしながら、別の場所と関わるような仕事もしていけたらいいな。知らないだけで、まだ日本にはいい環境がたくさんあると思うので。好きな場所をもっと増やしていけたら、自分ごとになる場所も増えておもしろいんじゃないかと思っています。
不安もあると思いますが、まずは飛び込んできてほしいです。自然の中では、思わぬことが起きたとき、自分で考えて動かなければならないことばかりですから。誰かに依存せず、自分で判断しながら人生を楽しめる人は、Raichoとフィットすると思うし、他の人ともうまく関係を築いていけると思います。
自分は、基本なんとかなると思って生きています。なので、乗鞍に来ることを迷っている人には、「なんとかなるよ」としか言えません(笑)。「大丈夫かな?」と不安に思う以上に魅力を感じてくれたら、ぜひ来てみてほしいです。課題もたくさんあるけど、本当にいい場所です。なんとかなりますよ。
一緒に見に行きましょう
国の天然記念物である雷鳥は、「神の使い」とも呼ばれています。高山でしか生きることができず、私たちも中々出会うことができません。
雷鳥のいる景色を残すことは、大好きな自然の風景を残すことです。
理想と現実のギャップを受け入れながら、理想の未来に向けて一歩ずつ共に歩み、みんなで美しい景色を見に行きましょう。