【やまとわと共同企画!】のりくら高原の地域材白樺を活用した「Kimamaベンチ」作りワークショップを開催!

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2021年9月11日と12日にのりくら高原の一の瀬園地でkimamaベンチの制作イベントを開催しました。
まずはこちらの動画をご覧ください。



Created by Satoshi Toda
1. kimamaベンチ制作ストーリー
2.やまとわさんとの出会いと朽ちていくベンチ「kimamaベンチ」
3. kimamaベンチの名前の由来
4. ワークショップ

1.kimamaベンチ制作ストーリー

のりくら高原には一の瀬園地と言われる地元の方々の心の原風景のような場所があります。

Photo by Yuichi Yokota まいめの池

かつて、のりくら高原は江戸時代に松本藩の杣山として利用された背景があり、林業で栄えました。明治になり杣山としての機能が無くなり、農業や製炭で生業を立てていきます。その頃、一の瀬園地は蕎麦畑が広がり、草原地帯は一面わらびが生え、わらび粉を精製したり、炭焼き小屋があって炭を作って、住民の食や現金収入のための大切な場所でした。その後、牛の放牧が行われるようになり、昭和に入り、スキー場やペンションブームなどでのりくら高原が人気の観光スポットとなり、産業は観光業が主体に移っていきました。

しかし、のりくら高原は、バブル期のリゾート開発を避けた結果(守った結果)、今となっては良い側面もありますが、バブル後から現代にかけて地域に投資することが難しくなります。近年は宿泊施設や観光客は減り、高齢化が進み人口減少が続いています。その結果、一の瀬園地のキャンプ場や食事施設などは閉鎖され、整備も行き届かない状況になってきました。

そして一の瀬の牧場も無くなり、牛がいなくなったことで、一の瀬園地は近年、白樺などの急速な森林化が進むようになりました。

自然の遷移からすれば、陽樹である白樺が生えていくことは普通の自然の流れでもあります。
しかし、先ほどから述べた通り、一の瀬園地はのりくらの人の生活と共にあった里山的な場所であり、人々と自然が共生し、美しい池や小川があり、乗鞍岳が見え、老若男女誰もが気軽に自然と触れ合える場所でした。

そのような場所が森林化で失われてしまうことは、人々の暮らしと共にある中部山岳国立公園の乗鞍という場所が失われてしまうことを意味します。人と棲み分けしていた動物たちもどんどん里に降りてくることになります。人が本来自然の一部であるように、自然と人の関わり合いがあってこそ、人も自然も本来の輝きがあるように思います。

そういった心の原風景が失われていくことを危惧し、サステナブルな乗鞍地域を作っていくため、現在、地元住民は修景伐採をして草原再生に取り組んでいます。

Photo by Yuichi Yokota

修景伐採を始めてから一つ課題として出てきたことが、伐採した木材の利用でした。のりくらの方々は地域材を薪として利用する文化は現在もありますが、それ以外は人々の生活の中に地域材を活用する文化はほぼ消えてしまっています。かつては製材屋があったらしいのですが、現在はないため、地域の建築資材も輸入材や別の地域の木材を利用せざるを得ない状況です。

60歳後半以降くらいの年配の方々は山に入り、必要なものを当たり前のように自分たちで作ることを今も続けている人もいますが、若い世代は、時代背景もあると思いますが、地域材を活用しようという意識はそこまでありません。使いたいけど、時間を割いて、何からどうすれば良いか考える時間と余裕があまりないという方が的確かもしれません。

そして修景伐採した白樺の丸太や枝葉が活用されずに一の瀬に転がっている状況でした。ある意味宝の山がそのまま放置されている状態です。

Photo by Yuichi Yokota

これは山奥だけの問題ではなく、乗鞍地域の課題だけでもなく、私(代表藤江)自身の課題でもあります。山奥暮らし始めて7年目に入りますが、森の中を歩くことはしていますが、私自身が「地域の森林を利用」しているかと言われれば、結局改装でも家具でもそういう視点は後回しにして、効率を優先していて、活用しやすい材を選んでいるという自分の中での矛盾を抱えていました。

そこで、まず始めに、例えばサステナブルアクショカフェ、GiFT NORiKURAで出しているジェラートカップやスプーンが元々リユースできるように木の製品だった(主に北海道の北見にあるオケクラフトセンターの製品)ので、それを地域材に置き換えることから始めたいと思うようになりました。

Photo by Yuichi Yokota GiFT NORiKURAで提供しているジェラートカップ、スプーン、トレー

2.やまとわとの出会いと朽ちていくベンチ「kimamaベンチ」の誕生

そんな頃、Twitterでフォローしていたやまとわの奥田さんの活動にとても興味を持つようになりました。

やまとわさんは「森をつくる暮らしをつくる」という理念の元、まさに乗鞍や私自身が課題として感じていることを次々と事業として推進し、取り組み一つ一つが本当に素晴らしいストーリーでした。ぜひロゴをクリックしてやまとわさんのWebサイトを確認ください。

↓感銘を受けている奥田さんのnote↓
なぜ僕らは、「森をつくる暮らし」をつくりたいのか

2021年3月頃、奥田さんにTwitterで地域材を有効活用したいので相談に乗って欲しいとDMを送りました。

すぐに返信があり、オンラインでの打ち合わせをすることになりました。
その後、やまとわの社長の中村さんと奥田さんがのりくらを訪れることになったのです。


のりくらの現状などを改めてお伝えし、地域材である白樺を利用してGiFTのカップやスプーン等の制作をやまとわさんに依頼しようと思ったのですが、それよりももっと重要なことを教えてもらいました。

「どうしたら地域材を活用する文化を作れるようになるか」

という話題になった時に、中村さんが、

「まずは楽しいことをすること。友達同志で木を使って何か面白そうなことをやれば良い。薪割りもみんなでやって、終わったあとみんなでBBQをする。そういうコミュニティーを作っていくことが大事で、伊那でもそれを年月をかけてやってきたよ」

これを聞いた時、本当にその通りだなと思いました。

そして、何か製品を作る前に、ワークショップ的なことをやって、「僕ら自身がまず木に触れよう」となりました。

それ以降は動画にもある部分なのですが、乗鞍地域では、「のりくら高原ミライズ」という30年地域ビジョンを策定し、地域作りに取り組み、観光地としてもどのように整備を進めていくかを議論をしていました。その「のりくら高原ミライズ」の勉強会で海外の国立公園などの景観を紹介してもらっている時に、のりくらには景観が良いスポットにベンチがないということが課題として上がっていたことを思い出しました。

そこで伐採して放置されている白樺を使って、ベンチを作ろう!!
となったのです。

そして、やまとわさんから具体的な提案を頂いたのが以下のようなイメージでした。

防腐剤とか釘を使わないからどれくらい保つかわからないけれど、と言われた時に僕はすぐに、

「別に腐ってもいいですよね」

と直感的に言ったのを覚えています。そしてその返答にやまとわさんもとても喜んでくれました。

「腐る」「朽ちる」ということを、現代は嫌がる風潮があります。食品や製品は品質が良い状態を長く保つことに価値があり、賞味期限が長い物が選ばれる。そのために添加物や薬剤を入れる。効率を求める、安価な商品を求めすぎるが故に、おかしなシステムが出来上がってしまっている。

さらに、長持ちしてしまったら、また作ろうってなかなかならない。朽ちるからこそ、ベンチに命を感じ、定期的に状態を確認しながら、あのベンチが腐ってきている!とみんなで言い合い、じゃあまたみんなで作ろうか!という場を設定できるのではないかと。その方が自然だなって。

そうやって、乗鞍で育った白樺が朽ちて乗鞍の土に還る、僕らも自然を利用する循環が生まれる。
今でいう自然も地域もサーキュラーな取り組みだなって思いました。こういう循環を生み出していくことが、今の社会に必要だと思います。

3.kimamaベンチの名前の由来

ベンチの名前を何にしようかと話していた時に、そのまま「朽ちてくベンチ」にしようかって言ってたんです笑
とてもわかりやすくて、インパクトがあるんですけど、「のりくらも朽ちていく」というようなことをイメージできてしまって、コンセプトは良いのですが、名前はもう少し明るい言葉にしたいなと思いました笑

そこで、グラフィックデザイナーでもあり、言語表現にたけている乗鞍在住の「Mondesign」さんに僕らの想いを言語化してもらいました。

植物達のように
そこにただ在るって、
簡単そうで実は深くて、
人はなかなかそうシンプルにはいかないけれど、
生命は多分、本来の生きる目的とつながっていると
そこに在るだけで輝く

花は花のままに
木は木のままに
土は土のままに

その姿に心動いたり
そんな風に生きてる何かに触れると、

人も人のままに生きようと思えたり。

このベンチに座るとそういうことを思い出すきっかけに。

木のまま、ありのまま

kimama

by Ayako Momiji

そして、こちらの素敵なロゴも制作頂きました。


4. kimamaベンチワークショップ

2021年9月11日、12日にkimamaベンチ制作ワークショップが行われました。
こちらは、環境省の令和2年度(補正予算)国立公園・温泉地等での滞在型ツアー・ワーケーション推進事業費に、一の瀬園地の地主である大野川地域景観保全・利用適正化連絡協議会で申請させてもらいました。目的は一の瀬園地の草原再生のための修景伐採と一の瀬園地のアウトドアフィールドとしてのプロモーションです。その事業の中一つの取り組みとして、修景伐採した白樺を用いて、ベンチを制作するというイベント(ワークショップ)を開催しました。こちらのワークショップはのりくら観光協会の一員であるRaicho Incが委託を受けて、やまとわさんとコラボレーションして実施しました。

コロナ禍もあり小規模開催となりましたが、地元住民や乗鞍に来たことにある方など総勢25名が集まりました。

前半の11日は午後からワークショップがスタートしました。まずはこのkimamaベンチのワークショップを開催することになった背景を説明し、その後実際に一の瀬園地にみんなで向かいました。

ベンチを作る丸太は元々修景伐採していた丸太を利用したのですが、参加者に伐採の瞬間(木の一つの役割が終える瞬間)を見てもらいたいと伐採作業を見学するところから始まり、みんなで伐採された白樺の丸太を運び出します。

その後、やまとわさんから制作工程の説明を受け、実際に作業に入りました。

制作はなるべく手仕事でできるように、グループ3人毎に一つのベンチを制作します。
両手挽鋸で必要なベンチの長さにしたり、を用いて丸太を真っ二つに割ます。ノコギリは使ったことがあるかもしれませんが、両手挽鋸などはどれも初めての経験で、みんなで力を合わせて夢中になって作業をしていました。


そして釘を使わない「木組み」の方法を学び、ベンチの脚などを準備して穴を開けてそれぞれを押し込んでいきます。

今回のベンチの脚は3本なのですが、のりくらの自然地形に合わせたデザインでした。自然地形にベンチを置くとなると地面が不安定なので、4本脚だと逆に不安定になり、3本脚の方が安定するそうです。デザインもとても可愛らしく、おうちの庭にも欲しくなってしまいます。

チームやまとわさんとの写真 Photo by Satoshi Toda

約2時間半の工程で10脚のKimamaベンチができました。最後にロゴの焼印を押して完成です。

ちなみに、一部電動カンナなど電気を使う器具を利用したのですが、電源のない一の瀬園地でのワークショップを開催するに当たって、株式会社Fooor矢井田さんのご協力を頂き、Eco Flowという最新の蓄電池を用い、さらに太陽光で発電しながら電気を供給しました。このEco Flow、未来の電源供給で活躍する物になりそうです。

さて、12日の後半は制作したベンチを実際に一の瀬園地の景観スポットにみんなで運びました。

のりくらの白樺が新たな命となって佇む姿は、乗鞍の風土に合うとても素敵な風景でした。

参加者からは、また参加したいという声をたくさん頂きました。またその後、地元の方や観光客にも座ってもらっている姿を何度も見て、作ってよかったなと思っています。
今回は1回目。実際どれくらいで朽ちていくのか、どんな課題が出るのかまだわかりません。

それでも今回地域の方や仲間たちと歩み出した一歩は、何か良い循環が生まれる「風」のようになった気がします。
私自身ももっともっと時間を作って木に触りたいと思うようになり、乗鞍愛がさらに深まり、それぞれに置いたkimamaベンチが我が子のようで、定期的に見に行っています。

その時に、ここに座って景色を眺めている方を見ると、嬉しくてたまりません。

早く第二回を開催したいです。

最後に、ワークショップ開催に当たってご協力を頂いた方々
・大野川区町会
のりくら観光協会
・環境省中部山岳国立公園管理事務所
・松本市アルプスリゾート整備本部
株式会社やまとわ
・株式会社Fooor
・のりくら在住の方々、参加された方々
・7月のサステナブルツアーの際に丸太運びを手伝って頂いたTABIPPOの皆様、POOLOの皆様

この場を借りてお礼申し上げます。

こちらのkimamaベンチ制作に関するご質問・取材・ワークショップ開催のご相談は以下よりお気軽にどうぞ

文章:Raicho Inc 代表 藤江 佑馬

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