10分間の宇宙 in乗鞍岳

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 先日、冬の乗鞍岳を雷鳥スタッフの拓郎君とスグル君の男3人で登ってきた。
乗鞍岳には夏と秋に2回登ったことはあるが、冬にはまだ登ったことがなかった。11月の下旬頃に初めて雪を被った乗鞍岳を見た時から、白銀に染まり存在感を放つ乗鞍岳の美しさに魅了され、早く登りに行きたいなと思っていた。乗鞍に住んでいるので、身近な存在のように思えるが3,000mもある冬山登山はかなりのリスクがあるし、知識・経験・体力がないとそう簡単には登れない。幸い、自分以外の2人の雷鳥スタッフは去年に冬の乗鞍岳に登ったことがあったため心強かった。

冬の乗鞍岳

night hikeスタート

 山行当日は、日の出を見るために夜中の4時から登り始めナイトハイクからスタート。夜空を見上げると満天の星空が広がっており、もうそれだけで最高であった。(乗鞍の天気のいい日の星空は、一の瀬園地で見ても最高に良い)雲ひとつない星空だけに、日の出への期待も高まり登り始める。しかし、登り始めて早々、自分のヘッドライトが切れてしまった。すぐに予備で持ってきていた2つ目のヘッドライトを装着するも、またもやつけて5分後ぐらいに電池切れ。完全準備不足。もし、一人で登っていたら撤退せざるを得ない状況であった。念入りな準備の大切さを痛感したと同時に、仲間と一緒に登る重要さも学んだ。

夜空

日の出の時間

 そんなこともありながら、スキーゲレンデを登っていく。乗鞍岳の冬は、夏と違いほとんど真っすぐ山頂を目指すことができる。その分、登りの傾斜も急であるため少しずつ登っていく。(傾斜が強いカモシカコースを登っている途中ぐらいで、スグル君は眠気と体力の消耗により、心折れそうになっていた。笑)7時前になり、背中の方からだんだんと空が赤く染まり始める。しかし、まだ登り始めて半分ぐらいの場所であったため、もう少し先の見晴らしの良い場所で日の出を見ようと歩くスピードを上げる。森林限界の標高に達し、周りの木々が低くなってきた場所で、ちょうど太陽が顔を出し始めた。さっきまで薄暗かった白色の雪の斜面は、太陽の光に照らされ徐々にオレンジ色に、空の色は群青色に染まり、目の前の世界が見たこともない景色へと変わっていった。その景色を見て、みんなで「宇宙みたいや」とはしゃいでいた。あまりの美しさに、疲れはふっとび、各々その景色を味わっていた。10分後ぐらいには太陽が上がり切り、あたりは朝のまぶしい景色へと変わっていた。

日の出

喜びのハイタッチ

 その後、ピークに向けてどのルートで登っていくか3人で話会ってから再び登り始めた。(たぶん一番急なルートで登った。笑)稜線に出てからは風が強くなり、バラクラバー無しでは厳しい冷たさであった。そこから、ピークにある鳥居に向かって一歩ずつ慎重に歩き登頂。ついた直後には、喜びの感情をみんなでハイタッチをして分かち合った。そして写真をとったり、神社の祠に手を合わせてから、風の当たらない場所でカップラーメンを食べた。蓋についた水滴が凍りながら食べるカップラーメンは初めてだった。笑 帰りは、よくこんな斜面登ってきたなと話しながら歩いていると、あっという間に下山し、行きの半分ぐらいの時間で降りてきた。下山後は安定のメープルという定食屋さんで、ボリューム満点の山賊焼きや唐揚げを食べて大満足。最高の山行となった。

真っ白な雪の斜面

山行から学んだこと

 今回の山行を通して、自分の準備不足を痛感したことと、仲間と喜びを分かち合うことは改めて良いなと感じた。準備不足については、ある程度仕組み化されている社会の中を生きていると、余程のことがない限り死なないし何とかなると思う。しかし、自然とういう圧倒的な力を持っている環境では、一歩先はどうなるか分らなかったり、最悪死のリスクもある。そこに対する危機感や、リスクを考える思考力は、身をもって感じたり、経験することでしか培われないし、それは社会を生きていく中でも必要なことであると思う。人間が自然から遠ざかっている中で、低くなりつつある能力のひとつであると考える。仲間で分かち合う良さは言うまでもないと思うが、文字で並べてもそこにある喜びの質量を感じることはできないと思うし、一緒に体感しないと分からないと思う。なので、頭でやらない理由を思考するより前に、やって一緒に喜びを分かち合いましょう!笑 その先には、まだ見たことのない景色が広がっているかもしれません。(いきなり冬山登山を勧めているわけではありません。まずは自分の手の届く範囲から。)改めて、今住んでいる近くにこんな最高な経験をできる場所があることが幸せだなと。この環境を繋いでいきたいなと思いました。

スグル君、拓郎君、僕

PS:乗鞍での冬の生活はそんなに甘くなかった。それもそのはず、標高1,500mに位置し、大寒波が来た時には最高気温‐12℃、最低気温‐18℃の極寒。水道管は凍ったり、暖めるためにつけた暖房で停電したり、雪道でスリップしたり。初めての雪国生活は分からないことだらけでトラブルの連続。正直こたえることもあるが、自分の周りには自然が好きで、大切にしたいという共通の価値観をもった、心強い仲間がいる。お互いに同じ問題にぶつかったりする中で、話し合ったり、助け合う中で前向きな気持ちを保てている。そんな仲間に感謝します。春が待ち遠しい。

いつも素敵な写真ありがとうございます!拓郎君
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